2021/05/10 / 数学
【数学】相加・相乗平均の関係を正しく使えていますか?
一時期Twitterで話題(?)になっていた「相加平均・相乗平均の関係を用いた最大・最小問題」について, 当ブログでも少し扱ってみたいと思います。
範囲としては高校の数学Ⅱ「式と証明」の内容になりますので, 高校1年生で学習する生徒も多いと思います。
念のため, 「相加・相乗平均の関係」をおさらいしておきましょう。
相加・相乗平均の関係
$a \gt 0$, $b \gt 0$ のとき $a+b\geqq 2\sqrt{ab}$ 等号は $a=b$ のとき成り立つ。
こういうものでしたね。
教科書には $\frac{\displaystyle a+b}{\displaystyle 2}\geqq \sqrt{ab}$ と書いてあるはずですが, 実際に問題を解くときには, 上のように両辺に2をかけた形で使うことがほとんどなので, あえてそちらで書いておきました。
さて, ではこれを使って次の問題を考えてみましょう。
$x \gt -3$ のとき$$f(x)=x+\frac{4}{x+3}$$の最小値を求めよ。
定期試験にもよく出題される問題ですね。
まず, よくある誤答を示します。
×間違った答案
$f(x)=x+3+\frac{\displaystyle 4}{\displaystyle x+3}-3$
$x \gt -3$ から $x+3 \gt 0$ なので, 相加平均・相乗平均の関係より
$f(x)=x+3+\frac{\displaystyle 4}{\displaystyle x+3}-3 \geqq 2\sqrt{({\displaystyle x+3}) \cdot \frac{\displaystyle 4}{\displaystyle x+3}}-3=1$
よって, $\boldsymbol{f(x) \geqq 1}$ なので, $\boldsymbol{f(x)}$ の最小値は1である。
ここで, 等号が成り立つ条件は
$x+3=\frac{\displaystyle 4}{\displaystyle x+3}$ かつ $x \gt -3$
すなわち $x=-1$
したがって $x=-1$ のとき, 最小値 1 $\cdots$(答)
———————————————答案終わり———————————————
計算ミスはどこにもありませんが, この答案は, 太字にした部分が数学の論理として間違っているのです。
たとえば, あるクラスでテストをしたとしましょう。
その結果, 先生から
「クラスの全員が80点以上でした!」
と言われたからといって, クラスの最低点が80点かどうかは分かりませんよね?
仮に全員100点だったとしても「全員が80点以上」というのは正しい表現です。
ですから, 本当に80点ぴったしの人がいることが確認できて初めて, 最低点が80点だと言えるのですね。
これと同じことが, 上の問題にも言えます。
$f(x) \geqq 1$ だからといって, $f(x)$ の最小値が1とは限らないのです。
$f(x)=1$ となる$x$が確かに存在することを確認して初めて, 最小値が1と言えるんですね。
ですから, $f(x) \geqq 1$ を示したすぐ後に, 等号成立条件を確認しなければなりません。
私の生徒にもよく言っているのですが
相加・相乗の不等式を使ったら直後に等号成立を確認!!!
これを忘れないようにしましょう。
正しい答案は次のようになります。
〇正しい答案
$f(x)=x+3+\frac{\displaystyle 4}{\displaystyle x+3}-3$
$x \gt -3$ から $x+3 \gt 0$ なので, 相加平均・相乗平均の関係より
$f(x)=x+3+\frac{\displaystyle 4}{\displaystyle x+3}-3 \geqq 2\sqrt{({\displaystyle x+3}) \cdot \frac{\displaystyle 4}{\displaystyle x+3}}-3=1$
ここで, 等号が成り立つ条件は
$x+3=\frac{\displaystyle 4}{\displaystyle x+3}$ かつ $x \gt -3$
すなわち $x=-1$
したがって $x=-1$ のとき, 最小値 1 $\cdots$(答)
———————————————答案終わり———————————————
相加平均・相乗平均の関係を使って最大値・最小値を求める問題にはもう少し難しいものもあります。
それについてはまた別の記事で扱おうと思います。